不登校は不幸じゃない。学校に行かないならその先をどうするかを考えて―10年間の不登校を経て高校生で起業 小幡和輝さん②

2020年4月29日

(前回からの続き)

不登校の理由で一番多いのは「なんとなく」

―――不登校のお子さんを1000人以上(!)見てきた小幡さんからすると、どんなお子さんが不登校になっているのでしょうか。

不登校になる理由はさまざまで、いじめ、勉強についていけない、インフルエンザなどで長期間学校を休んだために人間関係にうまく入れなくなってしまった、といったものもありますが、一番多いのが「なんとなく」なんです。「なんとなく学校が楽しくない」「なんとなく行きたくない」なんですよ。僕もそうでした。

今は大人になったから、コレコレこういう理由で学校に行きたくなかったんだ、と説明できますが、あのころは「なんとなく」学校がつまらなかった。小さいときにはうまく“学校に行きたくない理由”を言語化できないものなんです。

不登校になる前は、それこそ毎朝両親と大げんかです。「学校に行きなさい!」「行きたくない!」その繰り返し。いやいやながら遅刻して学校に行く日もある。休む日もある。そんな闘いの日々がずっと続いて、そして小2の終わりからスパン! と一日中行かなくなりました。

父が教師だったので、「学校には行くべきだ」という親の圧迫はどの家庭よりも強かったと思います。でも、最後は折れてくれた。あの時期がもっと続いていたら、ひょっとして自殺してしまっていたかもしれませんね。不登校になれないでいる子が、一番つらいと思いますよ。

「なぜ学校に行きたくないの?」に子どもが答えられないわけ

親御さんは「なんで行きたくないんだ」とお子さんに理由を聞きたがりますが、追及されればされるほど、子どもは苦しくなる。

例えば、いじめが原因で学校に行きたくなかったとしますね。親に「いじめられている」と伝えられたとして、親はそのいじめを解決しようとする。それで解決できるなら自分でとっくに解決しているし、自分がいじめられているという事実を周りに知られたくない。例えば、こっそりいじめっ子とクラスを分けてもらおうとする。すると、その“特別対応”が何かの拍子に周囲にバレてしまったら、余計学校生活がきつくなる。そうなると、子どもは口をつぐみます。親は不登校の理由をなんとか解決しようとする。しかし解決しようとすると、違う問題が発生してしまうんです。

親vs子どもで話すと、基本、親が勝ちますよ、当然ですよね。子どもが一生懸命説明しようとしても、途中で親に話をさえぎられたり、説得されたり。そうすると、「学校は本当につらいし行きたくないけれど、親にも理解してもらえない。世界中どこにも味方がいない」となり、その状態が続けば自ら命を絶ちたくなってしまいます。それが一番、不幸なことです。

不登校は不幸じゃない

―――不登校の子にとってのハッピーエンドって何なのでしょう。

僕は「学校に行ければOK」とは思っていないので、学校に行かなくたって、好きなことを見つけて、それがそのまま仕事になったパターンなどがハッピーエンドかもしれないです。

10年前の不登校と今の不登校は全然状況が違うんですよ。ましてや親御さんの子ども時代の不登校の感覚とはまるで違う。そもそものベースが違うと、子どもの肌感覚とすごく誤差が出てしまうと思います。小中学校における不登校の子どもの数は、昨今ものすごく増えているんです。直近の文部科学省のデータでは、平成29年度で14万4000人*1、平成30年度で16万4500人*2。1年間で約2万人も増加しています。不登校の理由も、「いじめ」は全体の1、2割ほど。無気力や対人関係や学力に関する不安の傾向が全体の半数以上を占めています。

でもね、不登校は不幸ではないですよ。今、テレビで活躍している有名人にも、不登校だった人はたくさんいます。指原莉乃さん、星野源さん、千原ジュニアさん、マツコ・デラックスさん、藤田ニコルさん、みちょぱさんも。理由はさまざまですが、不登校を経験しながらも好きなことを見つけて、現在の活躍と存在感がある。「不登校だから不幸になる」わけではないことを理解してもらいたいと思います。

不登校というのは、単に学校に行っていないだけであって、勉強しているし、友達もいるし、好きなこともしています。学校の先生の勉強方法が自分に合わなかっただけで、勉強自体が嫌いではない子もいます。だから、「学校に行きたくない」のその先、「じゃあどうするか」ということを、ご両親には考えてもらえたらいいなと思いますね。

取材後記

不登校を経験した芸能人が本当に多いことに驚かされる。しかし、「学校に行く」という普通の道を外れて、寄り道をした末に自分の生きたい道を見つけた強さが、芸能界や音楽という好きな場所で頑張りぬく原動力になっているのだとしたら、これからの未来を創っていく子どもたちに必要な“強さ”は、むしろ不登校に隠されているのかもしれない。

子どもが自分で決めたこと。それがたとえ「学校へ行きたくない」だったとしても、人生においてのマイナスではないかもしれない。

取材・文:小澤 彩/編集:下田 和

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