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子どもが自分の道を見つけるために、一番伝えたいこと〜お笑い芸人/オシエルズ 矢島ノブ雄さん・野村真之介さん〜

子どもが自分の道を見つけるために、一番伝えたいこと〜お笑い芸人/オシエルズ 矢島ノブ雄さん・野村真之介さん〜

一生続けられることを見つけてほしい。でも、それには責任がともなう

―――最後に、子どもたちにメッセージをお願いします。

野村:僕からは2つあります。

第一に「一生続けられることを見つけてほしい」ということ。それを、自分の力で仕事にしていけばいいんだから。自分が夢中になれること、それをやっていると一日があっという間に過ぎてしまうことを見つけてほしい。そのためには、自分にいっぱい問わないといけないんです。「これやってて楽しい?」とか「誰かが評価してくれなくても楽しい?」とか。そして、好きなものをたくさん見つけてほしいです。

そしてもう1つは、自分の経験を自分の言葉で、たとえ下手でもいいから、誰かに伝えるという経験をたくさんしてほしいんです。「自分自身の感覚をそのまま言葉にする」という経験をすることが、ひいては好きなことを見つける力になっていくと思うから。

例えば「指の中で小指が一番かっこいいな」とかでもいいんです。そんな、たわいないことを子どもはきっと感じている。人に言っても理解されないようなことでもいいから、自分の感じたことを自分の言葉でアウトプットしてほしいです。

矢島:僕からは「やりたいことはやったらいい。でもそれには責任がともなうことも覚えておかないといけないよ」と伝えたいです。人間というのは、社会との関わりの中で生きています。だから、「自分さえ好きなことしていればいい」「別に成功しなくてもいい」ではなく、社会に必要とされる人になれと言いたい。

そのためには、自分がやっていることへの評価や批判を受ける勇気を持つ必要があります。批判されるのはつらいけれど、そのあとには必ず成長がある。

ユーチューバーだってそうです。好きなことをやって“いいね”をもらう反面、批判的なコメントをされたり、低評価になることもあります。それがあるからこそ自分を高めていけるんです。評価や批判によって磨かれなければ、好きなことをつきつめてやっても意味がない。永遠の素人が趣味をやり続けているのと同じです。

「ありがとう!」と思って評価を受けろ、批判も受けろ、ほかのコミュニティと社会的なかかわりを持て。このことを、自分の子どもにも伝えたいですね。ただし、今話題の誹謗中傷については、必要以上に心を持っていかれないようにしてほしいと思います。誹謗中傷をしたい人は、本当にその人のことを思って批評なんてしてないですから。

誰かに「いいね」を言われるまで、自分に「いいね」を言い続ける

―――でも、なかには批判を受けるとつらくてやめたくなっちゃうような子どももいると思うんです。そういう子どもはどうすればいいでしょう。

矢島:誰かに「いいね」を言われるまで、自分に「いいね」を言い続けてほしい。そして、1人でいいから味方でいてくれる人、認めてくれる人を探せばいいと思います。

例えば、ノートに漫画を描いている子がいたとします。そこにAくんとBくんがやってくる。ノートを見たAくんに「ヘタな漫画だな。つまんねー!」って言われてノートを返されたら、きっともうその子は漫画を描かないでしょう。でも、Bくんが先にノートを見て「すごくおもしろいじゃん、この漫画。俺のためにもっと描いてよ」と言ってくれたとしたら、その子はきっとその先も漫画を描き続けます。

一番に自分のことを分かってくれた人たちの、あの笑顔。今も目をつぶったら、まぶたの裏に出てくるくらいの感覚。僕の体中にしみこんでいる、あの「認めてくれた」っていう感覚があるから頑張れるんです。

ただ、そういう出会いって“運”によるところがありますよね。親の中にも、自分の子どもが好きなら何でも認める親と、現実的で夢を早く諦めさせようとする親がいたりして、味方とは限らない。目の前にいる友達が味方とも限らない。先生だって味方じゃないかもしれない。

僕も野村くんも、ただラッキーなだけだったと思うんです。小学校や中学校のときに僕らのお笑いを爆笑して受け入れてくれたから、やってこられた。でも、1人や2人から批判を受けても、認めてくれる誰かがいることも僕は知っています。だから、その人に出会うまでは自分で自分に「いいね」って言い続けたらいいんです。

そして、誰かが認めてくれたら、今度はその人のために描きたいものを描こうって、その人にギフトを贈ることを覚える。「今度はこの人のために描きたい」って思ったときに、初めてクオリティが上がっていくと思います。自分のためより人のためにする方が、必ずいいものができあがっていく。そうすれば結果はおのずとついてきます。だから、諦めないでほしいですね。

自分のバックボーンを否定しない

ーーーオシエルズは「お笑い×教育」のパイオニア的存在になっていると思いますが、初めから1つの道を極めるのか、それともいろいろな道を試すのか、どちらが良いのでしょう?

矢島:そういう意味では、僕は“ダブルスタンダード”でした。お笑いの道、学校の先生になる道、僕らは早い段階から道がぼんやりと決まっていたんです。でも、じゃあその1本の道でずっと来たかというと、そうでもないです。うまくいかない時期は、芸人一本でやろう思ったことも、ピンでやろう思ったこともありました。

例えるなら、国道を走っていて、ゴールはなんとなく見えている。でも、その国道は4車線くらいある大きな道で、たまには左のレーンを走ったり、右のレーンに移ったり、真ん中のレーンを走ってみたりと、たえず動きながらここまで走ってきたイメージです。走りながら、その都度レーンチェンジ、シフトチェンジをして軌道修正してきました。

でも、そうやってやり方を変えてみる自分がいる一方で、曲げない自分もいました。小学校時代に皆の前でお笑いをやってウケたことや、教育学部で勉強したこと、そういう自

分の人生は否定しなかった。だから、今のような僕らのスタイルができあがったんです。つまり大事なのは、そもそも自分のバックボーンやルーツを肯定するところからスタートするということです。

僕は、いじめは受けていましたけど、親は優しかったし、順風満帆に生きてきた方だと思います。でも、親に虐待を受けていたとか、過去に壮絶ないじめを受けていたとか、なんらかの障害があるとか、そういう一人ひとりのバックボーンは変えられないから、目をそむけることはできないと思うんです。自分の中に染み込んでいる思想や哲学っていうのは、どうしたってバックボーンから生まれるものです。それを否定すると、アイデンティティや本当にやりたいことが分からなくなってしまう。

ところが、キャリアや自分の将来を考えている人の大半は、そういう自分を変えたいとか、そういう自分が嫌だからこうなりたいみたいな、自分の生い立ちや環境、バックボーンの否定から始まっている気がするんです。それって何の意味もないと思います。 

それは子どもに限らず大人であっても、です。ブレない自分をつくりたいと思ったら、自分の生きてきたバックボーンを一度まるっと受け入れてみたらいいかもしれません。

僕たちもたくさんの人に批判されてきた。でも、それと同じくらい認められてきた。自分を認めてくれる人、認めてくれる場所を“ホーム”と考えて、ホームでは自分を落ち着かせたりエネルギーをためたりする。外から評価や批判を受けるためには、出稼ぎ感覚で“アウェイ”に飛び出す。野球やサッカーの試合だって、ホームとアウェイ半分ずつやるじゃないですか(笑)、アウェイで戦い続けられる人には、傷ついても帰れる場所があるんですよ。一人ひとりに、そんなホームとアウェイがあればいいなと思います。

取材後記

お笑い芸人と教師、なりたいものが2つ。

その両方を悩みながら行き来した二人だからこそ、周りに認められない「暗黒時代」と言える時期があったようです。しかし、やっぱり芸人と教師の2つともやりたい。その思いが今の活動につながり、ようやく迷いなく進める未来がひらけたのだと感じました。

自分の生き方に悩み、これでいいのかと不安になる時期は、当然誰もが苦しいはず。自分の好きなことを見つけ、そんな自分を認めてくれる人を探すこと。その人が見つかるまで、自分自身に「いいね」を言い続けること。オシエルズは教育者だからこそ、手探りで生き方を模索している子どもたちに対する愛や、彼らに伝えたい思いがとても深い。

インタビューを終えて、もっとオシエルズのお笑いが見たくなりました。

 

取材・文/小澤 彩 編集/下田 和