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世界に目を向ける、ワールドオリエンテーション 〜大日向小学校体験記6〜

世界に目を向ける、ワールドオリエンテーション 〜大日向小学校体験記6〜

近谷純子 2020年1月執筆

ワールドオリエンテーションってなんだ?

午後の時間に行われることの多い、ワールドオリエンテーションという時間。
イエナプラン教育のハート(核心)と言われるもので、一般的な授業内容に照らし合わせると総合学習のイメージに近いだろうか。自分としてもこの時間に大いなる期待や希望を持っているわけだが、なにせ名称がワールドオリエンテーション。正直に言うと、「ワールドオリエンテーション」という名ですっきりと何かをイメージすることはいまだにむずかしい。

とはいえ。
ワールド=世界。
オリエンテーションは、その語源であるオリエント=orientに、(ある方向を)向く、(〜に)向かう、の意味があると聞いたときに初めて、ほう、と思った。

世界に目を向ける。
世界とは、必ずしも外国という意味ではなく。身のまわりの、自分と他者とで構成される世界。そして自然。

イエナプラン教育の柱に「ホンモノに学ぶ」という項目がある。
さらに言うと、耳にすることも多くなった、プロジェクト学習、または課題解決型の授業。ワールドオリエンテーションとは、その辺りを全部ひっくるめたようなものかなと思う。

自分自身が興味あるテーマを見つけ、それをとことん追求するのだろうか。あるいは協同という言葉があったけれど、数人でテーマに取り組むことで、ひとりではたどり着けない新鮮な視点や気づきを得るという体験を積むのだろうか。それを発表するのにどんな形を選ぶんだろう。いかにプレゼンするかがこれからの時代は重要なんだろう、などなど、親としてのワクワクはふくらむ。

いやいや、それはいくらなんでも期待しすぎだと、書いていて思う。
何もかもが素晴らしくいくなんて絵空事。
そもそも、何ごとかを子どもや学校に期待するというその姿勢がどうなの? と自分にツッコミつつ、でも、やっぱり楽しみではあるのだ。仕方がない。

歩いて田んぼを数えた!

昨年4月に開校し、ここにやってきた子どもたちもおそらく「???」のなかでスタートしたであろう、ワールドオリエンテーション。自己紹介といった段階を踏みつつ、1学期終わりのテーマは「大日向を知ろう」だった。学校のある佐久穂町の大日向地域。まずは学校周辺をめぐるスタンプラリーが行われた。そしてその後に4年生の娘が選んだ(思いついた?)テーマは、「大日向の田んぼの数を数える」

それは面白そう!と思うと同時に、どうやって?とも思う私。
「どうやって数えるの?」「歩いて数える!」
いや、大日向広いですけど。梅雨時で、毎日のように雨ですけど。
「田んぼの数を数えるって言ってるんですけど、ふたり(娘とお友だち)だけで学校の外に行かせるはむずかしいですよね…」と先生に尋ねると、「なんとか調整してみます」とのこと。ただしこの時点で、自分が付き添うことを覚悟する。

そして翌日だったか、翌々日だったか、午後の時間をやりくりして娘とお友だちの二人が待ち構える学校に向かい、いざ出発。なにせ学校まで車で送迎するような環境。私自身、大日向地域を歩くのははじめてだった。

さっそく田んぼ発見! 「あったー」「写真、写真!」「あれ? 田んぼってどうやって数えるの? どこまでで一個? っていうか田んぼって一個って言うの? えー!!」 おもしろすぎて、可愛すぎる。そしてここで口を挟むのは野暮だろうという親の勘で、横で黙っている。というよりも、私にもわからない……。

一緒に歩いていると口を挟みたくなることもあった。そもそも、大日向ってどこからどこまでかわかってる? 地図とか用意しなくて大丈夫? 地図があれば、田んぼがどこにあったって書き込めるんじゃない? と心の中でブツブツ言っては飲み込む。

ひとつだけ、どうしても我慢できなくて「あっちに使われてない田んぼもあるねー」と水を向けてみた。「ほんとだー」「それも数えてみたら?(休耕田に関心が向かないだろうかという下心で)」「それはいいや!」あっという間に却下されてまた歩き出す。

(仕方がない、こうなったらうまく誰かに出会わないだろうか、田んぼ作業中とか最高だけど、そしたら声をかけるくらいは私がやってもいいよね……)そう思いながら歩くものの、あいにくこの日は雨。地域の方に出くわすことはなく、学校へと戻った。

そして、翌日以降も付き合うことは覚悟していたが、この初回を除き、あとは先生が付き添ってくださった。雨の日もあったし、大日向地域というのは一区から五区まであり(一丁目から五丁目といった感覚)、私としてはすべて歩くのは無理だろうと思っていたのだが、何日かに分けてすべて歩き通したという。後日、「私にとってもとてもいい思い出になりました」と言ってくださった先生に頭が下がる。

そのほか、大雨でどうしても外に出られなかった時間には田んぼの数え方を知り、この時点で4年生の算数では未学習だった面積の求め方を教えてもらったり、田んぼクイズを作ったり。親としても何かと記憶に残る(←ここは重要ではないが)、いい学習だったなと思う。

パソコンで調べるだけ?

先ほどの”休耕田にも目が向けば……”もそうだったが、なんというかもっとできるのでは、もったいない、の思いのモヤモヤが時おり顔を出すこともある。

ワールドオリエンテーションのテーマが「プルーン」だったとき。ちなみに、佐久穂町はプルーンの産地として有名で、生で食べるプルーンがとても美味しい。学校でもプルーン畑を借り、子どもたちも栽培や収穫などを体験した。

息子は「プルーンの種類」に取り組むことに決め、パソコンで調べ、一覧を作っていた。私はというと、そこにモヤモヤ。せっかく学校のプルーン畑が近くにあるのに! 家の近所で、プルーンを栽培されている方とふたりも知り合いになったのに! なのにパソコン!? もはやモヤモヤどころか、イライラだったかもしれない。

でも、のちに発表を見学した同じクラスの保護者の方から複数、「すごくいいの作ってたね。しっかりした発表だった」と声をかけてもらい、複雑な気持ちになってしまった。

あの時、息子に「よくがんばったね」と言えなかった自分を、いまも少し引きずっている。


ワールドオリエンテーションの時間、大日向に田んぼを数えに出た4年生ふたり。

プルーンをテーマに取り組んだときの一コマ。

(第7回はこちら